脳内麻薬 人間を支配する快楽物質ドーパミンの正体
著者:中野信子
ちょっとマーケティング関連の仕事をしていて、お客様がどう考えているか、そのお客様にどうすれば商品を買ってもらえるか、日々考えるわけですが、人間の脳のしくみを勉強したらもっと根本的なことがわかるのではないか。
と良さそうな新書があったので手に取ってみました。
新書ですのでお安く、読みやすい。
内容は主に脳の報酬系について
- 脳の報酬系について過去の実験
- 薬物の効果や種類・成分
- 中毒・依存症のメカニズム
とつらつらと理系ならではな事実が書かれていました。
アヘンを使用していたローマ皇帝や、アヘン戦争、日本のヒロポンなど、人類の歴史を見てもオピオイド系麻薬との付き合いが長いというのも面白かった。
痛みと鎮痛の歴史年表
http://www.shiga-med.ac.jp/~koyama/analgesia/history-opium.html
まとめると、
- ドーパミンは自らの脳内で分泌され報酬を与えている(気持ちよくしている)
- 脳の神経にはノルアドレナリン、ドーパミン、セロトニン、アドレナリンという神経伝達物質をそれぞれ分泌する神経があり、報酬系の中心となる神経はドーパミンを分泌するA10神経
- 興奮性と抑制性がある(息が荒くなったりして興奮する興奮ではなく神経の作用)
- 過剰になると興奮状態になり攻撃的になったりする。不足しすぎると意欲や興味が減退し無気力に
- 苦痛を和らげる快楽物質「オピオイド」【ケシ、アヘン(オピウム)、成分を生成したものをモルヒネ、ヘロイン】
- 喫煙依存症は日本に1300万人 アルコール依存230万以上 過食・摂食障害も脳の報酬系の崩れから
- 快楽は記録され耐性ができてしまいさらに多くのドーパミンを求めてしまう(欲望に際限がない)
- 社会報酬系(恋愛依存からSNSのいいねなど 報酬物質を分泌するのは上記のA10神経)
などなど。
結局、脳のメカニズムを知ったところで「お客様にどうすれば買っていただけるか、気に入っていただけるか」という課題は解決しないのですが、普段生活していて、
「あ、これは、脳にドーパミンが分泌されてる」とか
「食事後は満足してる」時などふと考えてみると
人間もなにか特別な存在ではなく決まった性質の中で存在している生き物なのだなぁと思わされます。
人種や性別、性格だけではなく。
お金をもらえるわけではないのにいいねをもらいたくて、旅行にいったり、よりきれいで特別そうな料理を写真に収めたり、リアルが充実しているようにSNSに投稿する。
それもまた社会的報酬を脳に与えているというメカニズムだそうです。承認欲求を満たすとかも言われていますよね。
ドーパミンが欲しくて人間は活動している。
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念願の人と付き合えたり、仕事で目標を達成できたり、突然大きな報酬を得たり、それは何ものにも代え難い幸福感だと思います。
ですが、その幸福感って長く続きませんよね。
美人は3日で飽きるといいますし、イケメンも生活していくと粗が気になってきたりします。
目標の数字を達成しても今度はそれを上回る数字が目標になります。
大きな報酬も1年間もらい続ければ当たり前になっているでしょう。
それは、上記の脳の仕組みから説明がつくのではないでしょうか。
ドーパミンへの耐性が付き、要求がエスカレートする。
小さな喜びになれてしまうと、より大きな喜びを求めてしまい麻薬のように常により多くを求めていく。
だからこそ、人間は発展していますし、小さな動物さえも快楽物質を分泌する器官があり同じく日々進化している・・・とも言えます。
快楽物質だけでなく、セロトニンなどの精神を安定させる作用を持つ物質も気になりますが、人間の行動原理を見てみると当てはまる気がします。
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SFのマトリックスで脳に直接感情を作用させ人間はカプセルの中に入って一生を終えているというシーンがありました。
脳の仕組みがわかればたしかにできるのかもしれません。
それは毎日幸せで、醒めない夢の中で人生を終えられるわけで、嫌な人にあったり苦痛を味わったりしないし寝ていることも一生わからないということですね。
そんな人生、どうなんでしょうかね。なんて考えてしまいました。
著者の中野先生はブログもやられていました
http://ameblo.jp/nobukonakano
新刊もあるみたいなので読んでみようかなぁ
タグ: 脳, 読書